【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……そんなに、顔色が悪いですか?」
代わりに、鈴華様、桂鳳、飛燕、飛雪がついてくれている。
「翠蓮、やっぱり、私達だけじゃないわ。早く、宮に帰りましょう」
「昨夜、事を成してなくとも、陛下のお召があったのは事実でしょう」
「立てないのなら、儂が連れていくぞ」
「僕、翠蓮の荷物を―……」
「―ちょっ、待て待て待て!」
少ししたことで、すぐに動き出す面々。
全力で翠蓮が止めにかかったのを見て、他の妃達はクスクスと笑っているけど……。
「うっ……」
気持ち悪すぎて、愛想笑いもできん。
「大丈夫?」
さっ、と、袋を差し出してきた鈴華様は背中をさすってくれて、
「翠蓮のそばにいるようになってから、数ヶ月が経つけどさ……翠蓮、貴女、最近、月の障りきてる?」
そう、尋ねてきた。
やけに真剣な表情で、場はしん、と、静まり返って。
翠蓮は少し考える素振りを見せて、
「きてるよ、大丈夫」
笑った。
「本当?」
訝しげな鈴華様の視線を受けながらも、笑って誤魔化した。
「ええ。きてるきてる」
頷いていれば、きたことになればよかったのに。
(考えてみれば、私、もう、どのくらい来てない―……?)
言われて、意識する。
(鈴華様が来た時期ら辺に一度、金の指輪になったわ。それは覚えているけど、そのあとは―……?)
ずっと、寵愛を受けている気がする。