【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
―酷く、嫌な予感がした。
怖くなって、身体が震えてしまいそうで。
それを懸命に押さえ込んでいると、気がつけば、お茶会のお開きの時間となっていた。
「鈴華様、桂鳳といつもの薬草の手配をしていてくれないかしら?」
お腹に力を入れて、そう微笑みかける。
「いつものね、わかったわ。翠蓮はどうするの?」
「私は少し、兄様と話してくる」
適当な嘘をつく。
「祐鳳様と?―わかったわ、任せて」
純粋な鈴華様は、騙されてくれる。
「お願いね」
息を吐き出す。
……果たして、上手く、笑えているだろうか。
「じゃあ、代わりに、儂らがそなたの付き人をしようぞ」
「あら。フフッ、ありがと」
他のお妃様たちを見送って、鈴華様達が出ていくのを見る。
さて、じゃあ、そろそろ自分もお暇しようと思った時。
「―翠蓮、呼ぶのは嵐雪で良いですか」
そう、尋ねられて。
「誤魔化すなど、無粋なことはなさいますな。……おめでとうございます。翠蓮」
そして、優しい笑顔。
「おめでとうって……何がですか……」
ちゃんと、薬は飲んでいたはずだ。
それでも防げなかった懐妊は、運命だったとでも言う気なのか?
(あの人のそばで生きられないという、私の―……っ)
考えれば、考える程に悲しくて、苦しくて。