【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
―ずっと、聞こえてくる。
誰かの、悲嘆にくれ、責める声。
暗闇の中、両耳を塞いで座り込んだ翠蓮に苦笑しながらも、
『生きている限り、人を愛すのは当然のこと』
そう、言ったのは誰だったか。
「翠蓮様……」
「だから、もう、責めないで。黎祥にも、伝えてください」
順徳太妃が、衣を翠蓮の肩に掛けてくれた。
優しく肩を撫でられて、翠蓮は微笑む。
「……父様を、忘れないでいてくれてありがとう」
もう、良いよ。
父様はきっと、恨んではないから。
父様はそんな人ではなかったから。
(……この子を、守ってね。父様)
願うように目を瞑れば、
「……」
そっと、飛燕に頭を撫でられた。