【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「でも……」
「翠蓮、君が他にも愛されていることを嬉しく思う」
優しく頬を撫でて、二人の方を見る。
泣きじゃくる二人はただ、翠蓮を愛してる。
「―すまない。何をされても、他の何を忘れても、私は翠蓮のことは忘れないと思う。翠蓮は、私の全てだから」
謝ると、一瞬、睨んできて……すぐに。
「蒼覇と同じことを言うな……」
「腹が立つ……」
と、二人は呟く。
「龍翔、黎明!」
再度、翠蓮の咎めるような声を止め、
「君に噂が立っている。無事ならいい。どうか、身の回りに気をつけて」
そう微笑んで、黎祥はその場を立ち去ることにした。
「お、おい、黎祥、あいつら、まさか―……」
『"何も知らない”人間だものね』
そんな声が、耳元で響く。
「おいって―……」
ただ、歩く。
自分の失ったものを考えながら―……
「……なのかよ?おい、黎祥??」
―埋められぬ、喪失感を抱えながら。