【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
結凛と二人で白蓮の面倒を見て、必ず、翠蓮が幸せになれる道を、翠蓮に示すことを、二人で約束した。
その約束を、祥基たちは守らなければならない。
多くのものを与えてくれた二人の宝を、祥基はただ、守り抜きたい。
その思いだけで、翠蓮を守ってきた。
『諦めたって、何も得られない。あの子が諦めてしまったのなら、皆が諦めないであげて。例え、どんな所へ行っても、大丈夫よ。私の娘だからね』
繰り返すように、何度も言ったこの言葉。
『うんっ、任せて……必ず、守るよ…っっ…』
『約束よ』
そして、翌日、幸せそうな顔で旅立った白蓮の死を悼む翠蓮を支えて、三年。
変わらず、真っ直ぐな翠蓮はまた、大きな壁にぶつかっている。
彼女を守るためには、後宮にやらない方がいいんだろう。
それでも、彼女を後宮にやらなければならないという使命感もある。
この腹に宿る子供は間違いなく黎祥の子供であり、この国の未来を担うべき人間なんだから。
それでも、やはり、翠蓮が傷つくとわかっている場所に送り出すことは、優しさなんだろうか。
優しさは人のため為らず―……
なぁ、あんたならどう思う?どう答え出す?おじさん
相反する感情は、祥基の中をめちゃくちゃに掻き乱して、こんなふうに悩むのは性じゃないのに。
こいつらには本当に振り回されている、自分。
決してやり直せはしないのに、どうしても考えてしまう。
こいつが、三年前の暗闇から、抜け出せないこいつが、幸せになる道はどこにあるのかと。
それを指し示す、自分の前にもあればいいのに。
幸せになれる、翠蓮や黎祥を幸せに導く選択肢の見える、道標というものが。