【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
可愛い
「……あんたも、難儀ね」
「んあ?」
昼餉を取りながら、お盆を持った結凛を見上げる。
「翠蓮のことよ」
嫁に行ったのに、相変わらず、店の手伝いにも手を抜かない結凛はここから少し離れた席に座り、他の客と話し込む黎祥を見て、言った。
「難儀って……何が?」
「……ねぇ、あんたは本当に翠蓮を恋愛対象で見てないの?」
「お前までそれを言うか……何回も言うが、ない」
「本当?」
「何で、そんなに疑り深いんだよ?」
ここの定番商品の串焼き素麺を食べながら、首を傾げる。
(っ、香辛料かけすぎた……)
「あんた、基本的に自分の気持ちを言わないし」
口の中に痛みを感じて、水を手にする。
「昔だって、確か、近所に好きな子がいたけど、別のことくっつけるのに協力したことあったでしょ?」
「ゴフッ……ゲホッ…………っ、何で、そんなん覚えてんだ……」
「記憶力はいい方だからね」
したり顔されるけど、迷惑しかない。
やっぱり、嫁に行っても、人の親になる寸前だと言っても、結凛は結凛だ。
「…………あー、苦しかった」
「大丈夫?」
「お前が変なことを言うから」
「ちょっと、私のせいなの?だって、事実でしょ?」
「……そんなこともあったっけな」
今考えると、その子が好きだったのかは今でもわからない。
ただ、子供がお気に入りの玩具を取られて、いじけるのと同じような意味合いだと思うのだが。