【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
強いて言うのなら、ニヤニヤとしている結凛がうざったい。
「はい。どうぞ」
持ってきたのは、普通の串焼き素麺。
「……で、俺のは?」
「あ……と、叔父上にあげました!」
「でも、黎祥は辛いものが好きで……」
「気にしなくていいから、食べてください!」
辛いもの好きな黎祥が、香辛料をつかわないことなんてあるのだろうか?
「…………結凛、取り皿一つ」
「ん?あ、わかった」
結凛が持ってきてくれた取り皿に半分取りわけて、麟麗の手を引く。
「ほれ、座れ」
「え、いや……」
「いいから」
座ったことを確認して、彼女の前に取り皿を持っていく。
「半分こだ。……わざわざ、ありがとな」
黎祥の分じゃない。
きっと、黎祥に押し付けてきて、これは自分のだ。
彼女の控えめだけど、不器用な優しさがくすぐったくて、
「ゆっくり食べな」
翠蓮に似ているな、と、どこか思うと同時に、真っ赤な顔をした麟麗を可愛く思った祥基だった。