【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「お前は気持ちが高ぶった時、一旦、眠るのが一番だ。今は眠ってろ。大丈夫、大丈夫だから」
だんだん、瞼が重くなってくる。
嗅ぎなれた香が、翠蓮の心を落ち着かせる。
「今は、眠ってろ。お前は何も、心配しなくていい」
静かに眠っていれば、全てが終わる。
……そんなことは、夢物語。
そうあって欲しくないと望むくせに、そうあって欲しいと望む自分もいる。
「祥基……」
微睡む。
最近、眠れていなかった分を取り返すかのように。
「―おやすみ」
祥基のその一言を聞いた瞬間、翠蓮の意識は遠ざかった。