【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―静苑」
「はっ」
「皇子を……遊祥(ユウショウ)を、頼む」
言い残して、急いで、翠蓮の元に向かおうとすると。
「待て」
白華に止められて。
「何を―……」
「ここは、皇宮ぞ?そして、後宮の門は既に閉じておる」
確かに、この時刻だ。
閉まっているが、そんなものは、皇帝の権力で―……。
「何を考えとるか、分かるぞ。皇帝の権力で開けさせようというのだろう。阿呆か。騒ぎが大きくなる」
黎祥の考えを読んだ上で、悪口。
飛燕たちはさっきから、一言も挟んでこない。
なるほど。昔と変わらず、白華が一番強いらしい。
どんな局面に対しても、いつも、白華の言うことに従っていたあの頃から千年近く経っているが、変わってない。
そんな昔と変わってないものを実感して、懐かしむと共に、余計に翠蓮に会いたくなってきて。
「じゃあ、どうやっていけばいい」
「簡単じゃ」
白華が、手を振り上げる。
「なっ……」
すると、どこからか大きな水の玉が現れて。
「送ってやる。翠蓮のところまで」
白華の一言で、水の玉がこちらに向かってくる。
そして、その玉が自分の体に当たってきたことを自覚する間もなく、黎祥はある場所に連れてこられていた。