【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「二人とも、元気ねー」
結凛はニマニマした笑みをしながら、そう言って。
けど、祥基からすれば、鬱陶しいことこの上ない。
「じゃあ、行きましょうか。祥基さん」
そんな結凛の笑みの意味にも気づかないお姫様は、籠を抱えて、外へ出た。
「……まさか、叔父様のことでここまで盛り上がるとは」
そして、祥基ですらも驚きだったことを口にしたのだ。
「翠蓮、大丈夫かな……」
「麟も気になるか?」
「そりゃ、そうですよ。未だかつて無い、高速出世。僻みも、恨みも、全部、翠蓮に向かう。……子供が第一皇子で、皇太子冊立でしょ?きっと、叔父様は翠蓮の子だと知らないままかも……それが、怖い」
黎祥は大切なものには驚くほどの執着を見せるけれど、興味のないものには淡白らしい。
それを知っているからこそ、表向きは翠蓮の子供でも、本当の母親が違うものだと思っているのなら、子供ですらも大事に扱わないかもしれないという心配らしく……。
「いや、その件に関しては大丈夫だろ」
でも、祥基はそんな麟麗が憂うことについては全く考えてすらおらず。
「どうしてですか?」
「前にここに来た時、そう約束したから」
「……」
「黎祥は約束を破るやつじゃないし、それに、表向きでも翠蓮の子供なら、大事にするさ。何かあったら、翠蓮の責任になっちまうからな」
あの二人の子供だ。
ちょっとやそっとの事じゃくたばらないだろうが、何が心配かって……祥基からすれば、翠蓮がちゃんと後宮から抜け出せるのかという話。