【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「志揮、一つ質問なんだけど」
「はい?」
「同じ姓を持つものって、同時期に、後宮には入れなかったわよね?」
そう、後宮は同姓入宮不可という決まり事。
それは、全体的な家の力が不平等になってしまうからである。
ひとつの後宮に、姓は一つだけ。
だからこそ、翠蓮は李姓で入宮できたのだ。
「その通りですよ」
想像通り、志揮はニッコリと笑う。
「でも、白淑人がいるじゃない。同時期よ?どう考えても……」
「翠蓮、翠蓮は気にしたことないと思うけれど、家の上下関係というものは必ず存在していてね、」
「上下関係……?」
「例えば、どこかの家に与する家、みたいな」
「……」
「わかりやすく言うのなら、蘇家には黄家(コウケ)とかね。どうしても避けられないそれらを使って、朝廷の年配の方々は権力を得ようとしてくる。……だから、二人。死んだ後に判明した、名前だよ。前の名前は、別の姓だったからね」
「そう……」
そう考えると、少し怖い。
後宮って言うのは、本当に陰謀と嘘の鳥籠だ。
「それで……話戻すけど、結局、全員、亡くなっているでしょう?」
「うん。表貴人に至っては、翠蓮も見たよね。遺体」
「……ええ」
正直、思い出して気持ちのいいものでは無い。
けれど、彼女の命は、確かに消えた。