【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そして、この白麗……この女の子はね、僕らの恩人というか……この世界で、"散華”と呼ばれる三人の中の一人だ」
「"散華”……?」
散る、華……?
「その三人はこの世界に来て生活してなお、命の何故か尽きず、年も取らず、普通の人間が持たない力を持っているんだ。彼らは生きてきた功だと言うけど、まぁ、あちらの世界から来る人間達は、何かしらの力を持っているみたいだからね。それでも、まぁ、普通に生きて、普通に命を終えた人間が多い。例えば、先々帝の母親の高理美は黎祥の祖父、業波帝に愛されて、命を終えただろう?」
「……ちょっと、待って?」
目の前に広げられた歴史書を眺めながら、翠蓮は思考を張り巡らせた。
「つまり……異世界からのお客様で、死ねずに不老不死になっている人たちがいるってこと?」
「そう」
「その人達は今の所、全部で三人いて……それが、"散華”」
「うんうん」
「白麗は彩苑の時に眠りについて……目覚めてないけど、生きている。そして、先々帝のお母様……つまり、黎祥のお祖母様もまた、異世界からのお客様で……」
「そうだね。因みに、翠蓮のお祖母様でもある」
「それで……」
「あと言うのなら、えっと……彩陽帝は分かるかい?」
ゆっくりと整理しながら、頷く。
彩陽帝といえば、後宮の大掛かりな建て直しを行った人だ。