【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
絶望
「……今、なんて言いました?」
「後宮の、裏の池より……遺体が……」
―茶器が、床に叩きつけられる。
割れる。
その音は、まるで、翠蓮の心に共鳴しているように。
「桂鳳!」
「はい!!今すぐ、宮正司に問い合わせてきます!!」
その日は、予定された儀式の日から、一週間前のことで。
「どうして……」
皇子を、遊祥を抱いたまま、翠蓮は考える。
最近、毒に倒れた人間もいなければ、死んだ人間もいなかった。
それなのに……志揮の言葉を聞いてから、ずっと、翠蓮の心は縛られている。
犯人達は何を思って、行動してしまったの?という疑問が。
「―……天華、」
「何でしょうか」
「遊祥を、お願い」
「……翠蓮様はどうなさるおつもりで?」
「…………さりげなく、後宮内で聞き回るわ。―白華」
「―呼んだか」
遊祥を預けながら呟いた声に反応して、現れた彼に
「桂鳳が戻ってきたら、私の元に連れてきて。話を聞きたいから」
「わかった」
言付けてをして、顔に掛け布をする。
「杏果、蝶雪、ついてきてもらってもいい?」
「はい」「いいわ」
そして、二人を連れて出た外は、人の遺体が見つかったなんて思えないくらい静かで、いつもと変わらない殺風景。