【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「あら、龍睡宮にいたの?」
抱かれている子供は、黎祥の第一皇子・遊祥だった。
「わぁ、可愛らしい御子ですね」
「紫京、遊祥っていうのよ」
「遊祥様ですか〜。雰囲気的に、兄上たちを思い出しますね」
頬をつついて、笑う紫京様。
「祥星様と鳳雲様をね。翠蓮も、とてもよく似た瞳をしているし……やはり、育て親に似るんでしょう」
皇太后様も、遊祥を可愛がってくれていて……その時に発せられた、父と翠蓮の瞳が似ているという話で、少し心がざわついたけれど、育て親に似るものだという皇太后の言葉で、それほど自分は、彼らに愛されて大きくなったのだと思った。
皇太后が知らないはずがないのだ。
あんなにも、父たちと親しかったんだから。
知っていた上で、翠蓮の心に寄り添っていてくれたのなら、似ていると言ってくれていたのなら、それは、彼らなりの優しさだ。
翠蓮はそんな彼らを責める気なんて、起きるわけ無かった。
「それで?儂をなんで呼んだ?」
可愛がられる遊祥を皇太后に手渡して、飛燕は不思議そうに首をかしげた。
「えっと……お二人が、龍神に見えたいと」
「……遊祥に夢中だが」
「ね」
紫京様にとって、遊祥は姪孫に当たる。
(紫京様の兄・祥星様の息子の黎祥の息子だから)
初めての邂逅に、優しい笑みを浮かべる紫京様。