【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……苦しくないか」
「ええ。……黎祥が、どんな結果になっても愛してくれるって。あの言葉だけで、私はまだ、立ってられるわ」
「そうか……」
二人に可愛がられていた遊祥が、泣き声をあげる。
「あ……」
受け取りに行こうかとした時、遊祥を抱っこしていた皇太后が遊祥を優しくあやして、
「元気な子だ。黎祥は果報者だの」
と、微笑む。
「そうですね。翠蓮様の功績ですよ。きっと、黎祥も……っと」
遊祥を抱く皇太后から一歩離れて、紫京様が振り返った瞬間。
まるで、紫京様は何も見えていなかったかのようにふらついて、飛燕に支えられる。
「大丈夫かや!?」
その事に驚いて声を上げた皇太后様に、
「平気ですよ。ちょっと、後遺症です」
と、紫京様は軽く微笑んで、
「ありがとう」
と、飛燕に礼を言った時……目が合って。
「貴方は……」
人離れした容姿に、紫京様が息を呑む。
「呼ばれたから、来てみたのじゃ。会うてみたいと言われたんじゃが……儂に何か用か?」
飛燕の言葉に、目を見開いた紫京様。
それを聞いていた皇太后様もまた、
「どういうこと……」
と、呆然としている。