【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ですから、どうか、ご気分を悪くなされないよう……っ!」
「え、あ、……ああ、そういうこと」
蝶雪たちがどうして、こんなに必死になっているのか分かった。
「気にしなくても、分かってるわよ。それに、黎祥は私以外を妃にしないと、寝所に招かないとか言っているけれど、私はそんなことは不可能だと、どこか思っているから。だから、蝶雪たちも困ったことがあったら、何でも相談してね?黎祥に関することでもなんでも隠したり、ひとりで背負おうとしないで。必ず、力になるわ」
それは、心からの言葉だ。
色々としてくれて、彼女たちのおかげで、翠蓮は遊祥を無事に産むことができた。
今日まで生きてこれたのも、彼女達がいたから。
「大丈夫です!」
「陛下は、翠蓮様一筋ですよっ!」
力を込めて、そう言ってくる二人。
「フフッ、ありがとう」
微笑んでお礼を言い、翠蓮は二通目の手紙を開けた。
これは、桂鳳からである。
「……」
蝶雪達は翠蓮が手紙に目を通し始めたことを確認して、今度は化粧の準備を始めた。
「翠蓮様、爪化粧をしたいのですが……」
そして、準備を終えたらしい蝶雪に声をかけられて、紙面より、視線を上げる。
どうやら、手紙の確認をしているから、爪化粧を先に始めてくれるらしい。
下町では爪化粧なんてしなかったし、自分の身支度だって自分でやってるのが普通だったから、湯浴みにしろ、着替えにしろ、髪にしろ、やってもらうことはなれない。