【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「それが、どうかなされたのですか?」
「うん……少し、」
皇太后に、一人の妃の動向の見張りを頼んだ。
今頃、彼女の腹心が動いてくれていることだろう。
そして、桂鳳には疑問に思ったことについての調べ事を頼んだ。
それに、彼は完璧に答えをくれた。
杏果には、とある場所に聞き込みに行ってもらった。
かつて、一人の妃がいた場所に。
そして、天華に今、お願いしたのは―……。
「……紅翹」
音を立てて、全てが合わさっていく。
ひとつのズレによって、生まれた悲劇。
「何でしょうか?」
先々帝の後宮で寵姫の側近として働き、今はこの後宮の女官の中で、頂点に立つ人。
「先々帝の後宮の中に、いた人……」
「はい」
「異世界よりのお客様……」
「……」
途切れ途切れなのに、紅翹は微笑むばかりで。
異世界、なんて言葉を出すことが間違ってた?
信じられるはずがないか。
こんな、非現実的な話。
「革命の日、先帝の寝所で亡くなっていたという―……」
そこまで言うと、
「もういいですわ。翠蓮様」
と、紅翹は翠蓮の言葉を遮って。
「佳音(カオン)のことでしょう?」
と、察してくれた。