【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そうね……」
とりあえず、知りたいことは知れた。
あとは……それを、繋げられれば。
「蝶雪」
「はい」
「今から言うことを書いて、陛下と兄様に送ってもらえないかしら」
「分かりました。なんて、お書きしますか?」
翠蓮は口を開く。
翠蓮の考えが間違っていなければ、
流雲殿下の母君の死も、
これらの事件も、
蘇貴太妃のことも……全部、全部繋がるはず。
帰ってきた天華の報告も聞いて、どんどん、疑惑が確信へと変わっていく。
どうして、という思いは絶えないけれど、それを否定しようとは思わない。
冷たくて寂しい、孤独な道を歩く彼女たちの背中が思い浮かんで、ただ、悲しい。
「……紅翹」
「はい」
「佳音さんの……娘って生きている可能性は?」
「生きてますよ」
「……」
存外、あっさりと認められて、目を見開く。
「知っているの?」
「知っているも何も、翠蓮様もよく知っているお方……と、時間が近づいてきましたわ。髪を整えましょうか」
紅翹はそう言って、翠蓮の髪に触り始める。
途中で話をやめたのは、言えない"何か”のせいなのか。
(生きている、その年頃の娘―……)
思い当たるのは、一人しかいない。
翠蓮は蝶雪を近くに呼んで、囁いた。