【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「黎祥を……いいえ、皇帝陛下をお帰しした後、私が後宮で働くとして……全てを隠し通すことは可能ですか?」
帰そう。
黎祥を、いるべきところへ。
それが正解なんだと、翠蓮の中の"意思”が断言した。
「……貴方は全てを知っておられて、迎えに来たのですね」
それで、翠蓮を離すことを考えていないと、黎祥を見て思ったのだろう。
黎祥から、大切にされているのはわかっている。
だから、翠蓮を後宮へというのだ。
初めから妃にするには、身分がないから。
だから、翠蓮を―……。
「可能ですかっ?不可能なんですかっ?」
責めるような、口調になってしまった。
震えてしまった。
唇を噛んで、泣くのを堪える。
見据えると、嵐雪さんが辛そうな顔をした。
「……出来ますよ。情報操作は、可能です」
「それなら……」
「しかしっ、それでいいんですか?」
卓が、揺れる。
まるで、翠蓮の不安定な心のように。
良いも何も……。
「それしか、方法はないでしょう?」
黎祥のことは、忘れるべきなのだ。
祥基が言うように、結凛が、言うように。