【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「それで?」
「ん?」
「何をするって言うんだ」
「それはねー、」
仮面が、はげ落ちる。
現れたのは、冷徹な美貌。
見たことある。
これは……帝王の、顔だ。
「君達には、とあることをしてもらおうと思う。既に、祥基たちには動いてもらっているからね」
「……何をするんだ」
「そうだね……この紙通りに」
「……」
「大丈夫。戦略を立てるのは、得意なんだ」
笑う表情に、感情なんてない。
笑っているのに、笑ってない。
彼もそれに気づいているのか、それとも、紙に何か問題になることが書いてあったのか、
「……本当、変わらねぇ」
鋭い目を、男性に向けた。
「"あの男”のことを、翠蓮に言うんだな」
「うん」
「どうして、そんなことをする」
「翠蓮自身、既に知っていることだよ。彼とは、接触もしているみたいだ。―翠蓮の為に起こした革命は、結果として、彼女を傷つけることになるだろう。でもね、それ以上に得るものが多いと思うよ」
「……」
「大丈夫。彼女は強い」
「…………どこに根拠が?」
彼が、疑り深く尋ねる。
言葉を挟めない杏果は、黙って見ていた。
「勘」
そんな緊張した空気にそぐわず、長髪の男性は笑う。
怪しく、麗しく、美しく。
「心配いらないよ。―私の勘は、当たるんだ」