【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……待っててね、必ず、後宮平定するから」
「そんなもの、皇后となった、お前の管轄下だ。お前の好きにしたらいい。お前が好きに動かせる軍もまた、与えておいたから」
「……私に軍の指揮能力なんてないわよ?」
衝撃的な黎祥の言葉にそう返すと、
「それは、その軍の隊長に任せておけ」
と、言われてしまった。
皇帝のなせる技だろうか。
皇帝陛下としての威厳を損なわない笑みを浮かべる黎祥。
「……事件のこと、目処がついたか」
小さな声で話しながら、道を闊歩する。
時々、臣民に手を振りながらも、黎祥の言葉は冷静で。
「そうね。ある程度の目処は立ったかも」
「そうか」
「うん」
「……辛くなったら、手を伸ばすんだぞ。私は、お前の隣に居るから」
優しさが沁みる。
こちらに、穏やかな表情を向けてくれる黎祥。
「ええ、わかっているわ」
黎祥は翠蓮を信頼してくれているのだろうか。
自身の後宮のことを全て、翠蓮に投げてしまっている。
そして、その分、翠蓮が抱えきれないものを一緒に背負って、翠蓮を守ろうとしてくれるんだ。
(一見、非道のように見えるけど……黎祥の今の対応の仕方は、"皇帝として”間違ってはいない)
まだ、彼に笑顔を向けられるだけ、翠蓮は幸せ者だろう。
『お前の心を読むことも、理解してやることも、私には難しい。けど、その分、誰よりも味方でいると、寄り添うと約束する』
……あの約束が、違えぬうちは。