【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―あ、そうだわ」
「ん?」
「ひとつ聞きたいのだけど、玄和国王の紫京様って……どこか悪いの?」
「紫京叔父上?」
黎祥は少し悩んだ後、
「そう言えば、昔、毒のせいで生死の境を彷徨ったとは聞いたことがあるな」
それがどうした?、と、首を傾げる。
「いや、ね……前にお会いした時に、目眩を起こされていてね。本人の口ぶりからするに、慣れているみたいで……ちょっと、気になったものだから」
そもそも、毒の後遺症が……そんな形で残るだろうかと。
腕をなくすとか、
視力を失うとか、
寝たきりになるとか、
そういう欠陥なら、毒で起こりうる。
けれど、昔、受けた毒のせいで続くめまいなどは聞いたことが無いし、何より、それは他の病ではないかと疑った方がいい気がする。
「気になることがあるのなら、調べさせようか?」
黎祥が何かを察したのか、そう言ってくれたので、お言葉に甘えることにする。
「そうね……毒の種類が気になるわ。場合によっちゃ、私が何か、調合できるかもしれないもの」
「わかった。―嵐雪」
翠蓮の言葉に黎祥は嵐雪さんを呼び寄せると、顛末を話す。
黎祥がそばに居るけれど、だからといって、注意を怠るつもりがない翠蓮は、団扇で自らの口元を隠して、周囲に視線を巡らした。
はてさて、ここからどうしたものか。
目処はついた。
そして、餌も撒いた。
あとは、誰かが動いてくれるのを待つだけだ。
その為に―……真実を受け止める心の準備をしなくては。