【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「だがの……翠蓮、そなたが辛いなら、やめても……」
柳太后の気遣う声。
そして、自分を包み込む黎祥の腕。
「辛くない、いえば、嘘になる。……でも、大丈夫。それより、裁くことで、公主様が傷つかなければいいけど……」
「私の妹たちは、逞しい。……だから、大丈夫。そう信じてる」
「黎祥……」
「その犯人とやらの話も伺いたいが、もっと、調べを付けなければならなさそうだな」
「十六歳の公主といえど、子供がいる人がとる行動ではないわよね……蘇貴太妃様のことも気になるし……」
黎祥が呼びかけると、現れた複数官。
「皇騎」
「あーい?」
身軽な童顔の彼は、黎祥の言葉にニカッと笑う。
「……妹を、頼む」
「りょーかい、主」
「それと、話を聞いていただろう?―深く、調べろ」
そして、黎祥の命令を聞いて、すぐに情報提示。
「うん。……その事なら、ある程度、調べはついているんだよね。いつか、必要かと思って」
皇騎と呼ばれた隠密らしい男性は、
「――――も、複数犯のひとりだよ」
と、掌を明かす。
「!?なんじゃと!?」
それに驚いたのは、柳太后と黎祥。
翠蓮からすれば、わかり切っていたこと。
「皇后様はある程度、わかってたよね?」
確認するように見られ、翠蓮は小さく頷く。
「向淑妃様にお会いしてから、ずっと考えてた……彼女の名前は、本当は向夏艶(ショウ カエン)と言うって聞いて……彼女の過去のことを含めて、侍女に調べてもらったわ」
そこから出てきたのは、意外なことばかり。