【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「下手人は祐鳳様が捕らえ、連行されました。ただいま、急ぎ、調べにあたっているところです。それと、女官長の命令で、陛下は春宵宮に来てもらうことになります。最高の医術を用意しておりますので―……」
「分かったわ。ありがとう」
飛燕たちに指示をして、先に春宵宮に行ってもらう。
例え、傷を塞いでもらったとしても、無理な負荷はかけたくない。
黎祥は今は確かに人間で、この国の皇帝。
失う訳にはいかない存在で、黎祥がいないと、翠蓮も立っていられる自信が―……。
「翠蓮、黎祥を信じなさい」
先に、春宵宮に向かったのだろうか。
白麗以外の人物は傍にいなくて、
「黎祥は貴女を一人にしないわ。だって、その為に生まれてきたんだから」
白麗は変わらず、笑ってる。
「それに、翠蓮の幸せの象徴である黎祥を死なせるわけないじゃない?ただでは起きないわよ、私の子供たちは」
前世では、信頼していた姉君。
今は女神様で、本来は会える人ではないのに。
「―だからさ、祥星と翠蘭も心配なら、春宵宮に行くといい。大丈夫。絶対に死なない、死なせないわ」
どこに言ったのか、人の気配は感じないのに。
「泣いていいわよ、翠蓮」
優しく、抱き止められる。
背中に手を回すと、後頭部を撫でられて。
花の匂いが、優しく香った。
そして、年甲斐もなく、翠蓮は白麗の腕の中で嗚咽した。