【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
***
蘇貴太妃は―蘇愛晶(ソ アイショウ)は、とても従順な子供だった。
生まれてきた頃から、皇后となるために育てられた子供だったからだ。
毎日、絢爛豪華な贈り物が、父からは届いた。
多くの妻がいた父にとって、子供など忘れてしまうもの。
存在すら覚えられていなかった多くの兄弟の中で、例え、顔を合わせることがなかったとしても、遊んでもらうことがなかったとしても、贈り物があっただけで、他の誰よりも愛されている気分に浸れた。
父にお礼を言えば、母が褒められた。
きちんとしていれば、父も母も褒めてくれた。
母はよく、愛晶を抱きしめて、『自慢だ』と言ってくれたものだ。
それが、嬉しかった。
両親が笑って、喜んでくれることがただ、嬉しかった。
けれど、ある日。
愛晶のことを自慢だと褒めてくれた母が、死んでしまった。
病による、死だった。
悲しくて、悲しくて、愛晶が何事にも取り組めなくなった時、父は呆れて、
『ならば、お前は要らない』
そう、非情に告げた。
そして、母の遺体を供養することも無く、川に投げ棄てようとした。
―怖くなった。
この人は、愛晶の中に家の利益しか見ていないのだと、悟ったのだ。
愛されていると思い込もうとした自分が、とても愚かに見えて、仕方がなかった。
母を、捨てられたくなかった。
だから、父にしがみついて。
『必ず、皇子を産んでみせるわ!陛下のお役に立つよう、頑張るから……っ!!』
時は、業波末期。
年の頃を考えても、次の帝の妻に愛晶を添えようとしている、父の目論見はハッキリとしていた。
蘇貴太妃は―蘇愛晶(ソ アイショウ)は、とても従順な子供だった。
生まれてきた頃から、皇后となるために育てられた子供だったからだ。
毎日、絢爛豪華な贈り物が、父からは届いた。
多くの妻がいた父にとって、子供など忘れてしまうもの。
存在すら覚えられていなかった多くの兄弟の中で、例え、顔を合わせることがなかったとしても、遊んでもらうことがなかったとしても、贈り物があっただけで、他の誰よりも愛されている気分に浸れた。
父にお礼を言えば、母が褒められた。
きちんとしていれば、父も母も褒めてくれた。
母はよく、愛晶を抱きしめて、『自慢だ』と言ってくれたものだ。
それが、嬉しかった。
両親が笑って、喜んでくれることがただ、嬉しかった。
けれど、ある日。
愛晶のことを自慢だと褒めてくれた母が、死んでしまった。
病による、死だった。
悲しくて、悲しくて、愛晶が何事にも取り組めなくなった時、父は呆れて、
『ならば、お前は要らない』
そう、非情に告げた。
そして、母の遺体を供養することも無く、川に投げ棄てようとした。
―怖くなった。
この人は、愛晶の中に家の利益しか見ていないのだと、悟ったのだ。
愛されていると思い込もうとした自分が、とても愚かに見えて、仕方がなかった。
母を、捨てられたくなかった。
だから、父にしがみついて。
『必ず、皇子を産んでみせるわ!陛下のお役に立つよう、頑張るから……っ!!』
時は、業波末期。
年の頃を考えても、次の帝の妻に愛晶を添えようとしている、父の目論見はハッキリとしていた。