【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……私、この国が好きよ。黎祥」
泣くな、泣くな。
繰り返す。
繰り返して、息を呑む。
これが、"正解”の道なのだ、と。
泣いてしまえば、全てが崩れる。
黎祥はきっと、全てを捨ててしまう。
それは、嫌だから。
「だから、民を救う王様になって。黎祥」
お願い。
「私の愛した人達を、切り捨てないで」
お願いよ。
貴方を望んでいる人たちを、自ら切り捨てようとしないで。
貴方は、この国に必要な人。
「……分かった?黎祥」
翠蓮の確認の言葉に、黎祥は首を横に振った。
「わからない」
「黎祥……」
「わかりたくない」
「黎祥、あのね……「翠蓮」」
被さって、名を呼ばれる。
そして、返事をする間もなく。
「お前も、私を捨てるのか……っ?」
そう、尋ねられた。
その言葉に、翠蓮の唇は震えて。
捨てるだなんて、そんなつもりはないのに。
でも、違うって言っても……彼には、届かない。
「―じゃあ、貴方に問い掛けるわ」
俯いて、翠蓮は声が震えないように、精一杯、声を振り絞って。
毅然として、黎祥を見上げた。