【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
人の幸せは憎たらしく、心はどんどん歪んでいく……そして、気がつけば、二十五。
身請けされることもないまま、花街に来て、約十年。
外の世界では同い年なのに、私を純粋に姉と慕う妹がいる。
愛人と正妻の子という違いだけで、私はあんな目に遭わされていたのに……現在だって、知らない男達の相手をする、花街にいるのに。
妹は笑っている。
私が売られた時は、泣いていた妹が。
寂しいと、言っていた妹が。
笑っているのだ、莉娃の初恋の人の隣で。
(―……許せない)
実家でもひどい扱いを受けていた。
花街に入ったからといって、何か生活は変わったか?
買われていた奴婢として、手綱を握る人間が変わっただけじゃないか。
私に自由はない。
息を殺して、嘘の声で鳴いて、両親と呼ばれるものに復讐する機会をずっと、ずっと、狙う毎日。
自分が生きているのかどうかすら、疑う毎日。
花街の女は強い人間もいれば、弱い人間もいて。
多くの人間の死を見ているうちに、自分でも、自分の中の何かが狂っていくとわかった。
歪むことをやめない心に伴って、どんどん、どんどん……それでも、両親に復讐するまではと、生きていたのに。
でも、天とやらは残酷だった。