【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



―……両親が、流行病で死んだらしい。


兄が寄越してくれた、手紙で知った。


兄は両親であった当主夫妻がめちゃくちゃにしたせいで、傾いた家を立て直すのに必死だった。


片手では、将軍を務めて。


兄は忙しく、色んなところを走り回っているらしかった。


皇帝の覚えがよかった兄だから、なんとかなるだろうとは思っていたが……どうにもならないらしい。


国も前にあった皇位継承権争いのせいで、かなり損害を受けていたらしく、その中で皇后の実家とはいえど、援助するのは大変だろう。


皇帝は助けてやることが出来ず、兄に謝ってきたらしいけれど、国政が厳しい中、皇帝が幾万の民よりも兄を優先させることなどできるはずがない。


皇位継承争いの中でも莉娃の初恋の人とともに皇帝の補佐を務めた兄の世界は広く、兄は莉娃に色んな"外”の世界の話を教えてくれたけど、手紙で救い出せないことを謝ってくれたけど、私の心は埋まることはなかった。


でも……兄の気持ちは、ただ嬉しかった。


兄だけが、私を忘れないでいてくれた。


そして、私は兄を援助しようかと考えた。


使う場所もない大金は溜まるに溜まっていく―……。


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