【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
使わないお金なら、譲ってもいいだろう。
家のことも、妹のこともどうでもよかったが、家が没落して大変になるのは兄だ。
嫁に行った姉妹はともかく、兄には幸せになって欲しかった。
兄は結婚せず、皇室に忠誠を捧げている。
家はどうしても、没落する訳にはいかないらしい。
何故なら、二人も皇族にお嫁に出しているから。
例え、姓が違ったとしても、二人とも莉娃が出た家の出身ってことは有名だったからだ。
(でも……)
私は信じられなかった。
どうして、そんなに奔走しているの?
(私を売った、お金はあるんじゃないの……?)
正直、今思い返したとしても、売られた時、特に感慨もなかった。
この人たちを家族と思うことは出来ず、妹は大切に真綿に包まれたような生活を気に入ってなくて、いつも反発しているような、そんな妹が気に入らなくて。
反発されても、許す両親。
―悲しいことなんてなかった。
捨てられるのは二回目だった。
一度目は、産みの母に。
二度目は、父に捨てられるだけ。
売られた時、自分につけられた値段は高かったと思う。
大体、家族五人が三年間余裕で暮らせるくらいのお金。
それすらも、あの糞な両親は使い切ったというのか。
驚くと共に信じられなくて、莉娃は死んだ両親を嫌悪した。
家が没落しようが、妹がどうなろうがどうでもよかったが、私が売られた時、遠征で家にいなかった兄はそのことに激怒してくれたと聞いて……まだ、両親がいたのなら、何かをしようとは思わなかっただろう。
でも、兄の為なら、何かをしてやりたいと、私は思った。
久しぶりに、私に良心が生まれた瞬間だった。
復讐したくて絶望に耐えていた中、もたらされた、生きる意味を失うほどの両親の死。