【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『兄様、妹は……結婚した?』
『……ああ、息子を二人、授かったよ』
『似ているの?あの方に』
『そうだな。剣聖と呼ばれるようになるんじゃないか?』
『兄様のあとを継ぐかな?』
『どうだろうな。未来はわからん』
妹のことを初めて聞いた日、兄の言う未来を想像すると、少しわくわくした。
幸せな未来を、思い浮かべられた。
でも、想像と現実は違う。
『うっ……』
兄が帰った夜。
食事をとっていた時のこと。
妙に気持ちが悪くなって、兄が渡していた多額のお金で、女将は医官を呼んでくれて。
―幸せだった。
幸せだったけど、こんなことは望んじゃいなかった。
『!?、十六夜!どこに行くんだい!!』
『離して!私っ、私は―……』
『初めてのことなんだ!それに、お前はここに来た時から、月経は不順だっただろう?気づかなくても―……』
『っっ、どうしてっ、どうして、飲んでおかなかったの!?堕胎薬を……いつも、いつも、相手したあとは飲んでいたのに―……』
後悔した。
医官がもたらしたのは、妓女にとっては最悪の言葉。
お腹に宿った、小さな命。
間違いなく、愛逢月の子供だった。