【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『かあたま?』
擦り寄ってくる、可愛いわが子。
頭を撫でてやると、笑って抱きついてくる。
老夫婦の元、順調に子供を育てていた私はある日、花街の女将に逢いに行くことになった。
花街に行くのは二年ぶりで、翠蓮も連れていこうと思ったけれど、花街は教育に些か宜しくないし、連れていくのは大きくなってから……そう思って、老夫婦に預けた。
―それが、大きな間違いだった。
花街のみんなは変わってなくて、優しかった。
差し入れをすると、『幸せそうでよかった』と言われた。
それくらい、莉娃は幸せそうに見えたんだろう。
そして戸惑いながらも、莉娃が出て行ったあとも、愛逢月は来ていないと言われた。
莉娃は分かっていた。
会ったとしても、話をするつもりもなかった。
でも心のどこかでは、彼を望んでいた。
―もう一度、会いたいと。
小姐達は泊まっていけばいいと言ってくれたけど、翠蓮が待っているから、丁重に断わって。
『また、来るわ』
約束して、花街から出たの。
思い出してしまった愛逢月との思い出を振り払うように、早く、翠蓮に会いたいと思った。
急ぎ足で尹家に戻ると……信じられない光景が。
―家は火を噴いていた。