【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『大丈夫ですか?』
あの日と同じ。
貴方は柔らかく、優しく笑って、私に手を差し出す。
その手を取らず、莉娃は顔をそむけた。
『……大丈夫なわけ、ありませんよね。必ず、下手人は見つけ出しますので……』
『その目で?』
『え?』
『…………結構です』
私のことも分からない貴方にこれ以上、希望を抱かない。
夢も見ない。
あの願いも、捨ててしまおう。
(会いたい、なんて願わなければ……)
こんな形の再会は、望んでいなかった。
(『ずっと、ずっと、信じて待っていたのに……っ!!』)
心の中で、昔の自分がそう叫ぶから。
莉娃は、その自分を握り潰した。
信じていると叫んだ幼くて、愚かな自分なんて、この世界にはいらない。
実の両親で、思い知ったはずだろう?
実の子供ですら、捨てる親がいるこの世界で、捨てられた子供が夢を見るなんて、烏滸がましかったんだよ。
―馬鹿みたいだね、ほら、また信じてしまったから。