【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『……』
こんな惨めな人生があるだろうか。
生きているだけ、無駄じゃないか。
焼けた後から、赤子の焼死体は発見されなかった。
両親が、誰かに託してくれたんだろうか。
(貴方たちがいてくれたから、私は少しだけでも、幸せを知れました)
心の底から感謝をしつつ、今度こそ、復讐を誓った。
何度も信じて、裏切られるのが私の人生で、苦労を知らない人間がこうして何度も、私の大切なものを奪っていくのなら。
―奪われる前に、奪い返そう?
『殿下!こちらへ!!』
『でも……』
殿下は、莉娃のそばに座り込んでいた。
綺麗な衣が、煤だらけ。
莉娃はその衣を手に取って、軽く、埃を落とす。
『お行きなさいませ』
覚えていないのなら、そばにいないで。
『……十六夜?』
そう思って、言葉にしたのに。
あなたは何度も、私を引っ張ろうとする。
『っ、何を言っているのでしょうね。すいません』
『っっ……』
やめて。
もう、これ以上、私に希望を見せないで。
『……人違いではありませんか?』
最大の、花街で培った笑顔を見せる。
そして、自らも立ち上がって。
『お呼びになられてますよ』
彼に、声をかける。
自身の頭を押さえて、混乱している
愛しい人に、"さよなら”を。
『では―……また』
また、なんてありません。
あるとしたら、私が罪人のときでしょう。
さようなら。貴方。―そして、貴方を愛した私。