【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



―もう復讐しか、この手にはないのだから。


おおかた、莉娃の入宮が駄目になったから、彼女は入宮できたのだ。


後宮は恐ろしいところ。


そこに入ることを望んだってことは、殺されることも覚悟の上ってことでしょう?


鳥籠に逃げ込めば、大丈夫だと安心したの?


例え、男に生まれていたとしても、莉娃は去勢してでも、相手を追いかける。


そうしたら、ほら、どう?


入った後宮で家の位もあり、高位にいられた貴女に賄賂で簡単に追いついてあげられたわ。


莉娃は化粧をして、彼女と話をした。


さすれば、彼女は簡単に漏らしたわ。


私が、貴女の味方だと勘違いしてね。


火をつけたこと、そこが、尹家であったこと。


確信が持てた時、すぐに殺そうと思った。


でもね、貴女はいつも誰かを射殺さんばかりに、あの人を見ていたわ。


皇帝陛下の隣にいる、皇后を―……柳翠蘭を、私よりも年は上なのに、もう一人の妹に合わせて、莉娃を『姉様』と呼んだ、義理の妹を。


『腹が立つわ。あの女がいなければ、その地位は私のものなのに……』


彼女は子供を一人も産んでいなかった。


理由は、お渡りがなかったからだ。


夜伽をしなければ、子供を授かりようがないじゃない?


翠蘭はとても幸せそうに、くだらない話をしては陛下と笑いあっていて、よく、彼女や莉娃に気をかけた。


他の妃達にも気をかけて、素晴らしい女君だと、大きな評価を受けていたわ。


後宮に入った時、陛下のお年は四十二。


翠蘭は、三十八。


そして、私は三十四。


陛下が深く愛された女性は、念彩蝶。


陛下の寵愛を受けるため、念家の養女となった人。


第六皇子とされている息子を一人産んでなお、深い寵愛をもらっていて、彼女が憎む相手は、翠蘭だけではないだろうと思った。


彼女の憎しみは見当違いだ。


だって、翠蘭が死んでしまったところで、陛下の傍に貴方の椅子はないもの。


とりあえず、愛想を浮かべて、時を過ごした。


陛下の寵愛を受けることがないように、


復讐できる時を見て。


ただ、怨敵である、彼女のそばで笑い続けたわ。


彼女は何も知らず、のうのうと、目の前の人間を憎み続けていた。


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