【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
第五章 宵月の秘密
悲しむ少女に手を差し出した、一人の銀髪の青年。
―そなたは?
震える声に、詠うように彼は応えん。
―その者を救いたければ、私と契約を結ぶべし。
真っ赤に染まった衣に触れて。
―この方を、貴方は救えんと?
女王の問いに、青年は笑い給ふ。
―私に、名を。
さすれば、その者を救う力が、得られんと。
女王、青年に名を与えん。
その名、女王の消えし後も宝にせん。
彼の者、女王を探し求めり。
【宵始伝―契約の始まり―より】