【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『お前のところにいる娘、第七皇女……私の娘か?』
ある日。
宮に訪ねてきた、皇帝。
傍には、皇后ー翠蘭もいて。
莉娃は、全てを話した。
幸いにも、皇帝は話を聞いてくれる人だった。
翠蘭は莉娃のことなど、忘れているようだった。
(それでいい……)
寂しいなんて、気の所為だ。
莉娃は露珠を、死んだ露珠の母親に早く返してやれなかったことを、心から謝った。
案の定、その死んだ女に興味を示すことのなかった皇帝は、
『私の娘を、救ってくれてありがとう』と、
初恋の人に似た笑顔で、御礼を述べてくれたんだ。
とてもじゃないけど恐れ多くて、莉娃は深く拝礼し、そして、その子供を第七皇女として、死んでしまった少女の母親がつけたという名前で、育て上げる権利を貰った。
その引き換えに、一度だけ、陛下の閨に侍ることになったけど。
その中でも、陛下は指一本、莉娃に触れることは無かった。
『寵愛を受けたいのなら、構わぬが……要らないだろ?』
莉娃の心中を見通して、笑った祥星様は優しかった。
一度だけの夜伽と皇族を救ったという、適当な理由をつけて、莉娃は四妃のひとつ、"賢妃”の位を貰った。
上に翠蘭を含めた、四人の妃がいたけれど、自由に生きるには充分だった。