【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
莉娃が嫌いなのは、一番は暴君となった勇成だった。
後宮にいると、将軍となっている兄を見れた。
兄は莉娃が後宮に入ったことに気づいていなかったみたいだけど、言葉の節々に莉娃を思う言葉を交えてくれる、兄の優しさが嬉しかった。
莉娃の手はもう、汚れ切っているのに。
翠蘭にその事を話したら、翠蘭は時々、兄のことについて教えてくれて。
彼女の優しさに、泣きそうになった。
祥星様が"死んでしまって”、
露珠の母親が"自害してしまって”、
何事も自然に流れているように見えて、自然ではなくて。
勇成が殺されて、円皇后が死んで、多くの妃は処刑されて?
新しき皇帝の渡りなどない後宮に、
貴女が現れた。
まるで、あの時の……露珠の母親、佳音のように。
多くの人間を治し、
人を救った。
いくら周囲の人間が毒を盛ろうと、それを翠蓮はひとつずつ解決していってしまった。
寵愛とか興味もなく、現帝を賢帝だと認めていた莉娃は特に何の手出しをするつもりも無かった。
なかったのに……陛下との、黎祥との距離が近くなる度、翠蓮の身は裏で危険に晒された。
でも、また、"不自然”にいなくなるの。
翠蓮を、傷つけようとする人達は―……。