【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……翠蓮、バレちゃったから、正直に聞くわ」
「え……?」
「貴女、宵琳と叡季のこと、知ってる?」
―周囲には、人は少なかった。
翠蓮と蝶雪、天華、そして、いつ現れたのか、紅翹がいた。
尹賢太妃の侍女と思われる人達はどこにもおらず、翠蓮は答えていいものかと悩みながらも、頷く。
すると、
「やっぱり……っ!」
明景は目を見開いて、そして、何かに安堵したのか、涙を零し始めた。
「えっ、め、明景さん……?」
勿論、これには戸惑わざる得ない翠蓮である。
先程の、尹賢太妃の真実にも驚いたが、この明景さんの反応も気になる。
いつも気丈で、笑っている印象を持っていたから、尚更。
「―……翠蓮、その双子はどこにいるんだ?」
「えっ、琳と叡ですか?」
「そう」
「……下町にいますが」
そこで、麟麗様たちと暮らしている。
秘密にしておくと約束した手前、その約束から何年経とうが、あまり話したくないのが本音だが、明景さんの泣いてまで必死に問い詰めてくる姿を見ていたら、黙っていることが心苦しい。
「あの子達は……笑ってる?」
「……」
震える声。
明景さんのその姿は、子を想う母親……。