【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「笑っていますよ」


―翠蓮も、人の親になったからだろうか。


瞬間、遊祥の顔が思い浮かんで、素直に答えてしまった。


「そう……」


また、ほっとした顔。


もしかして、もしかしなくても……。


「―双子の母は、貴女なんですか?明景さん」


「……」


翠蓮は口を噤んだ。


尋ねる前に、別の人間の声がしたからだ。


「っ、鈴華様!?」


振り返って、驚く。


そこに堂々と腕を組んで立っていた少女は、


「返答によっては、対応が異なりますので」


と、鋭い目を明景さんに向けている。


「ど、どうして―……」


「おじい様の意思よ。一応、叔父上に許可はとっているわ。……私が、じゃないけど」


「おじい様?」


誰のことだろうと、翠蓮が首をかしげていると。


「……祥星様ね」


と、尹賢太妃が微笑した。


「あの人がやることらしい」


祥星様……と、いうと、黎祥の父親。先々帝のことか。


「尹賢太妃様も覚悟なさってください。あの夜、貴女を斬りつけた妃は、何かの目的があってのことでしょう?貴女は巻き込まれただけとはいえ、黄妃と媽妃が殺されるところを黙って見ていたことに関しては、罪に問われます。黄妃の身体は氷漬けを終えた、池から見つかったそうですが……媽妃の体はどこに埋められているのか、さっぱりです」


堂々すぎる鈴華様の物言いに、目を見開かずにはいられない。


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