【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
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「そう、ですか……」
事件の全容の、御報告。
それを済ませると、呉妃は顔を曇らせて。
「やはり、あの子が―……」
「ええ。ですが、彼女が黒幕と断定するのには難しくて」
「どういうことですの?」
「えっと、つまり、まず、表貴人などの死で始まった、色々と不可解な事件なんですが……彼女が関わっていたの、最初の表貴人の事件だけなんです。表貴人のことに関しての罪は、彼女は認めてくれました。怒りに任せて……と。でも、今回、ここまで大事になってしまったのは、陛下をはじめとした、皇族の方々の御命が狙われたことにあります」
「それで……」
「はい。後宮内は少し、ざわついてしまいました。一度つつけば、色んな襤褸が出るってやつです。巧妙すぎるそれらに、私も騙されましたが……本来あった計画に、付け加えられて……複雑化していたんだなと、今考えれば、理解できますよ」
「碧晶は……先の皇后様を貶めた、先帝陛下を許せなくて」
「そうです。自分の命と引き換えになっても、いつか、姉を取り戻したいと考えていた」
「存命中から、先帝陛下は先の皇后様にだけ、当たりが強かったものね……」
呉妃はため息をついて、遠くで遊んでいる自分の娘に目を向ける。
彼女は先の皇后の叔母という立ち位置でありながら、先帝の妃の一人でもあった。
「当たりが強かったわけ、何かあるのですか?」
何かを知っているのかと訊ねると、呉妃は苦笑して。
「簡単な話よ。先の皇后様は、聡明すぎたの。先帝が隠したかった、自分の恥とするところを……全て見てでも、先帝を愛されたから」
真っ直ぐすぎる愛が、先帝には辛かった。