【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「わがまますぎる話よね。碧晶が怒っても仕方ないわ」
碧晶様は先帝の後宮に自らが入ることも考えたが、その時に同姓の妃は後宮に入れないという仕組みが邪魔をして、困難だったそうだ。
「碧晶も、碧晶よね」
その話をすると、呉妃は微笑して。
「彼女は幼いのだから、先帝陛下のお手つきになる保証もなかったのに。それでも、乗り込もうなんて……よっぽど、好きだったのね。先の皇后様のこと」
優しい瞳でそう話す彼女は、やっぱり、二人の叔母なんだと思う。
「兄様の昔からの無茶振りにはなれたけど……それに、彼女達が振り回されたのは考えものだわ」
「無茶振り……」
「だって、そうでしょう?考え知らずというか、本当、兄としては私の恥」
ばっさりと言いきって、
「でも……」
優しい笑みを浮かべて、
「そうじゃなかったら、明花にも会えなかったってことだから。それは、感謝してるわ」
と、幸せそうに。
先帝の娘として、残った皇女。
色々とこれから先も苦労が絶えないかもしれないが、彼女たちの上に立つものとして、立派な皇后でいたいとも思う。
「改めて……お二人の恩情に、深謝致します」
頭を下げて、膝を折った、先輩妃を見て、
「後宮はなくなりますが、これからも、色々とご指導、宜しく御願いしますね」
翠蓮は笑った。