【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「こんな形でしか、会わせてやらなんだ。すまぬ」


「えっ、いや、別に謝らなくても……」


確かに生きて会えていたら、


もっと、実母との時間があったら、


考えることも、


行動も、


それなりに、色々と違ったかもしれない。


でも、それはもう、取り戻せないものだから。


「……ここを訪れることが出来ただけ、とても幸せものです。ありがとうございます。皇太后様」


鳳雲父様が今の翠蓮の様子を知ったら、何を思うだろうか。


怒られる気が、しないことも無いが。


(皇后様になっちゃったって言ったら、大変なことになるだろうなぁ……)


実は先々帝の実弟という、かなり驚く肩書きを持っていた父の口癖は


『身分なんてなくても、幸せになれる』だった。


……まぁ、わからんことも無い。


というか、皇族にそれを言われたら、否定する気にもならない。


今回の事件の中にはそんな父を慕いすぎて、事件に走られた例もあるので、あまり言えないが―……父は意外といい加減な人である。


「皇太后陛下、皇后陛下、ご機嫌麗しゅう」


白蓮お母様一途だった鳳雲父様が翠蓮の頭の中でふざけた時、現れた三人。



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