【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「兄様、灯蘭様、紫京様」
翠蓮が振り返ると、その場に膝をついて、彼らは一礼。
「やめてください」
皇太后宛ならまだしも、自分宛というもの何だか、照れ臭いから。
「今は家族の時間じゃ。やめておけ」
皇太后様がそう言うと、皆、立ち上がって。
「翠蓮、あのね……」
灯蘭様は言いにくそうに、話しかけてくる。
「どうか、しましたか?」
「あの……泉賢妃がね、『ありがとうございました』って。その……碧晶のこと」
友人だった分、かなり気まずいのだろう。
そりゃそうだ。
大切な友達だったとしても、皇族の友達が罪人であってはならないわけだから、興味のないふりをしておかないと。
「お礼を言われることはしてません」
翠蓮が何かを言う前に、黎祥が極刑はやめてくれたし、何より、そうならないように手を回してくれた。
彼女の命を救うためなら、皇太后にも先々帝にも逆い、皇后位も返上する覚悟だったんだが、先々帝が特に碧晶の処分には賛成してくれて、黎祥の手を回す手伝いをしてくれた。
(挙句……何故か、流雲様に殴られてた)
まぁ、行ってきたことを考えれば仕方がない、自業自得じゃ、と、龍神達も、皇太后様も言ってたけど。
そんな中、黎祥の場合は殴ることも無く、ただ、無言で見つめるばかりで。
それはそれで、先々帝には色々と与えるものがあったらしい。