【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「怒りそうって、言ってもねぇ……」
困りもんである。
その理論を提示して、昔、彩苑の飛燕たちに対する、蒼覇自身への守護を断ったのは蒼覇自身だし、立場が逆転している今、それを翠蓮が提示して、飛燕たちにお願いすることは、何の否もない話だと思う。
「まぁ、それは、後々決めるとして!」
後に回された。
「あとは、僕と白麗、蒼炎、飛龍の事なんだけど……事実、蒼炎と飛龍は翠蓮と契約交わしちゃってるからね。しかも、飛龍に至っては驚く程、早くに」
「だって、翠蓮、人気だから〜」
人気の意味かよくわからないが、とりあえず、彼らの中では飛龍は勝手な行動をしたということで、咎めたということだろう。
飛龍の頭に光る、誰かに殴られたであろう痕は痛そうで。
「飛龍、大丈夫?」
「大丈夫。殴られ慣れてるから」
「……」
それはそれでどうなんだろうか。
「ちょっとね、翠蓮たちに紹介したい人たちがいるんだ」
飛龍の気ままな発言を華麗に無視した志揮は、何も無い空間に話しかける。
「紹介します」
何も無かった空間に紋が現れ、二人の人が出てきた。
「あ!」
その人たちに懐かしそうな声を上げるのが、白麗である。