【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「うんっ!」
優しく笑いかけると、元気に返された。
だから、そっと、志揮と額を合わせて。
「―我、汝に名を授けん」
飛燕たちの時は、相手が神様ということで省かれた、名付けの儀式。
流石に、元人間の志揮には無しでは強引すぎるから。
「"志勇(シユウ)”」
新しい名前。
志を持った、兄のような人だった。
どこか泣き虫で、情けなさも感じるけど、頼もしい人だった。
その人が願うのなら、何でも与えたい。
奪ってきてしまった分も、どうか。
だから、名前はこれで。
「志勇……」
名前を当たえられた志勇は、その場に傅いて。
「……名与えし主に、永久の忠義を」
―深く、頭を下げてきた。
「気に入って、くれるかな?」
志と勇ましさを持った、大切な人。
皇太后も、兄も、灯蘭様も、紫京様も。
龍神たちや、賢者達が見守る中。
「これからもよろしくね、志勇」
そう微笑むと、彼はまた、泣き顔を見せた。