【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
変わらない故郷
「んで?結局、皇后になるのか」
「あはは……みたい」
「みたいってなんだよ。自分のことだろ?ってか、お供が質素すぎるぞ」
「あはは……」
「相変わらずの、過保護さだな。祥基」
「お前もなんでいるんだよ。この国の皇帝夫妻がこんな散歩のように気軽に下町に遊びに来て……お忍びといえど、問題ありまくりだろ。しかも、お供が二人って……」
「何か問題が?この国の屈指の将軍達だが」
さらっとした、黎祥の言い返し。
それに、頭を抱えた祥基。
そして、ここ、結凛の実家。
遊びと報告に来た、下町。
見慣れた風景と、慣れた祥基の説教まがい。
翠蓮達が皇帝夫婦ということで、今は軽く貸し切られた状態にある結凛の実家内で。
「それに、私たちに文句を言わないで貰えるか。お前の店の常連だという蒼月だって、隣国の王だと言ったろう」
「あの王様には、何言っても無駄だろ!」
「じゃあ、この店の端で飯食っている奴は?」
「あ……?」
祥基の視線は、ゆっくりと店の端へ。
「……この国の先々帝と皇太后がいるんだぞ。何か問題が?」
全てが終わったあと、悠々とした余生を楽しんでいる、彼ら。
後宮に住んでいた、先々帝の妃達はこれから先も後宮のあった場所に居を構え、先々帝や皇太后様と過ごしていくと言う。
そして、先々帝は下町に忍んでいた間のように、今も色んなところをふらふらしている。―皇太后を連れて。