【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そう言えば……豹兄上に謝られたって?」
「…あ、ああ。うん。何で、知っているの?」
「紅翹が」
微笑み返されて、納得。
「謝られたって言うか……バラされたって言うか」
「バラされた?」
「本人を目の前にして言うのもなんだけどね、私、夜伽のあとはいつも薬を飲んでたの。身ごもりにくくする薬を。身ごもるわけには行かないと思ってたから……で、調剤する時間がなかったから、豹に頼んだのよ。そしたら、私がそういう薬だと思って飲んでいたそれが、逆効果を示すように作られていたらしくて。その件で……ね」
「……まさか?」
「うん……遊祥は、多分、そのせい」
律儀に薬を飲んでいたのが、仇となった。
今思えば、全くそんなことは無いんだけども。
当時はすごく悩んだからね。
「あ!でも、この子は違うよ!?」
思わず、お腹に触れて、振り返る。
このお腹に宿ってくれた子供は、そんな作為的なことは何もしていない。
「分かってるよ。ただ、豹兄上もまた、父上の子供なんだなぁと、思っただけだ。私が、薬を飲んでいたことを責めるわけないじゃないか。そんな権利もあるまいに」
「……」
「今のお前が、何も後悔してないのなら、私はそれで十分だよ」
そう言いながら頭を撫でられて、変な気分。
黎祥が嫌とか、そんなんじゃないんだ。
愛していたから、あの頃の懐妊は絶望しか感じられなかった。