高本さんちのそこそこ男子
「あ、一華、お待たせー」


なんて呑気な声を出しながらゆったりと家から出て私の隣に並ぶ男。


「お待たせ、じゃないでしょ!次の電車逃したら遅刻決定だから!急ぐよ晃陽!」


「そんなに焦らなくても、駅近いから大丈夫だよ」


「ばか!もう電車出発するのに5分もないの!だからそこそこ男子って言われるのよ!」


「…それ、関係ないじゃん…」


そう、私の幼馴染み、高本晃陽(たかもと あさひ)こそが、学校でそこそこ有名な、"そこそこ男子"なのだ。


こげ茶色で、いつ見てもサラサラな髪質に、少し眠たそうな目。


成績もそこそこ優秀。


運動もそこそこできる。


などなど、あげだしたらきりがない。


誰が言いふらしたのかは知らないが、いつの間にかそんな異名を持つようになった。


まぁ、いわゆる、並以上特別未満というやつなのだが、本人は大して気にしていない。
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