その悪魔、制御不能につき
内心は戦々恐々としながらも上からの命令には逆らえないので胃薬をポケットに仕込みつつ社長室の扉をノックする。
「あぁ、斉木さん。お待ちしてましたよ」
ニッコリと笑顔を見せる都築さんにますます胃が…私は一体何をさせられるのかしら?
「では社長、斉木さんも行きましょうか」
「あぁ」
………何も聞かされていないのだけど。私は一体どこに連れられるのか。
聞きたい。心の底から聞きたい。が、そんなこと聞ける空気でもなく無表情の社長と有無を言わさない笑顔を浮かべた都築さんに連れられた先はなぜか高級ホテル。
あら、そういえばここのホテルでパーティーがある云々って前に言っていたような…まさかか。まさかなのか。
「では、行ってらっしゃい」
言い出せずにいるとニッコリと笑顔を浮かべた都築さんに私は職員の人に差し出された。そこからは前から決まっていたのかと言いたくなるような見事な流れ作業だった。
もはや私の口出す暇などなく、言われるがままにエステを受けてネイルやヘアメイクなど頭から爪先まで磨かれてシンプルかつ上品なドレスを着せられてアクセサリーもつけられて…これ、本物の宝石かしら。だとしたらかなりの値段なんだけど。
そうして気づけば午後の時間は過ぎていき、次に社長たちと会えたときには社長たちもしっかりしたスーツに着替えていた。……なんだこれ。