その悪魔、制御不能につき
「とてもよくお似合いですよ」
美麗な笑みで私を迎えた都築さんに対して私の目は据わっていたに違いない。今、というか薄々思っていたけどこのままではおそらく、いや、きっと私の平穏な日々は失われる。絶対。
もともとはっきり物を言う性質(たち)だしこのホテルに連れ込まれる前までは遠慮していたところがあったけどこのままの状態でいたら私、いつかとんでもないことに巻き込まれる。
この確信は大正解でまさか警戒心バリバリ張っていた都築さんではなく無表情がデフォルトの社長が背後にいたとは夢にも思わなかったが。
「斉木さんにはこれからもパーティーなどについてもらう予定ですから。私が出られないときの代理のようなものですね」
今日はその予行演習なので気楽にどうぞ、と言われても私からしてみればいきなり本番にぶち込まれたとしか思えないんだけど?
予行演習とか言っても今日確実にパーティーあるわよね?しかも結構大きいやつ。そこらへんちゃんと情報共有してるんだからね?という文句は美麗な笑みによって黙殺された。
しかも「ではあとはよろしくお願いします」と変わらず笑顔で言い捨てて私と社長の2人残してどこか消えるんだから軽く殺意湧いたわよね。
社長と2人きりという場面は初めてなのでそれなりに緊張する。基本的に社長は社長室から出ないので会うのも自己紹介のあのとき以来だし…
「輝夜、」
「……!」
思わずビクッと肩を揺らしてしまった。いきなり声をかけられたのもそうだし、まさか社長が私の名前を呼ぶとは思わなかったのもある。